2009年7月19日日曜日

イルカの家

ここには一杯イルカがいる。
芸達者なイルカばかりで、行けば笑顔で迎えてくれる。

と言うのは冗談で、私の高校時代の先輩が、経営している養護老人ホームである。
その隣の敷地に彼は、若い人を対象とするリハビリの学校も建てた。

場所は笠岡市の寄島、海に面している素敵な処である。

ここまで書いたことから 推察すれば、かなりのやり手と思われるかも知れない。
だが、私は高校時代の彼を知っている。

彼は同級生、下級生からも、漫画のキャラクターに似ていることから、だめちゃんと呼ばれていた。
あくまで、愛称としてである。

私は今でも二人きりの時は、だめちゃんと呼ぶ。
ただ、今は公にも立場のある人なので、人前では決して言わない。

彼はお父さんが、やはり医者で、寄島という小さな田舎町で町医者をしてた。
彼は小さい時から、その父親の姿を見て育った。
それゆえ、町医者の大切さをはっきり知っていた。

高校の時、私はだめちゃんから、幾度も聞いた。
「俺はいずれは寄島に帰って、親父の後を継いで、寄島の町医者になりたい。」

彼はほんとに医者になり、最初岡山で医者をしていたが、彼はある時、故郷に帰った。

お父さんの後を継いだ。

が、そればかりでなく、養護老人ホームを建て、リハビリの学校まで造った。
彼は決して営利だけを希求する人間ではない。
必要に迫られて造ったのだ。

勿論奥さんの応援も並大抵のものではなかった。

8年前、彼と近況を話している時、夏祭りに来てくれとの依頼を受けた。
それから毎年行かさせて貰っている。
いつも、喜んでくれ、一杯お土産まで持たしてくれる。
控え室には、毎年私の為に、冷たい恵比寿ビールを用意してくれる。

ところが、今回控え室には担当の方達が、冷たいおしぼりとソフトドリンクとお茶は用意してくれていたのだが、冷たい恵比寿ビールは無かった。

だめちゃんが担当の方に指示するのを忘れていたのだ。(おそらく・・・)
私は待ちに待ったが、冷たいビールは来なかった。

担当の方に言うのも気が引けるし、ましてだめちゃんはお客さんの接待もあり、忙しそうである。
結局最後までビールに有り付けなかった。

祭りも終わり、太鼓の片付けをしている時、だめちゃんが来たので、私はとうとう言った。
「あの、恵比寿ビールが無いんだけど」
だめちゃんはてっきり控え室にビールが出ているもんだと思っていたらしい。
でも後の祭り。

帰りにビール1ケースと高級ブラディーをくれた。(まあこれは毎回なんだけど)
やっぱり嬉しく、すべては水に流すことにした。

また来年もと依頼を受け、帰途についた。

有り難き先輩だ。

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